マドレーヌ
（Mdn1,Mdn2,Mandola,Cello,Gt.,Cb）12 min.
●初演
​　ARTE MANDOLINISTICA 大阪公演2021～アルテの挑戦vol.5　

　記憶というのは不思議なもので、手繰り寄せると表層的な情報しか受け取れないが、意思に反して思い出させられるときには当時の感触が付随するものである。

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　マルセル・プルースト「失われた時を求めて」を読むと、記憶がいかに知覚や感情と強くリンクしているかに気が付かされる。同作品には、紅茶に浸したマドレーヌを食べた瞬間、過去の思い出が甦ってくるという有名なフラッシュバックの場面があるが、私たちもふとしたきっかけで（それは匂いであったり音楽であったりする）、過去の体験が生々しい感覚を伴って呼び起こされることがあるだろう。

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　本曲は、同作品にインスピレーションを得て作曲された。また、そのアイコンとなる「マドレーヌ」をタイトルとして採用している。

　記憶の持つ懐郷や暴力性、そして豊かな幻想世界を、ゆったりとたゆたう3拍子や短2度（半音）の響きで表現した。

​※三重大学創立60周年記念演奏会パンフレットより転載（作曲者記）